第19回全日本学生・ジュニア短歌大会(日本歌人クラブ主催)の入賞作が冊子になりました。小中高生、大学専門学生などを対象に毎年、作品を募集し、今年は1万2千首超が全国から寄せられました▼選者の一人、歌人の古谷円さんは、学校生活や家族を生き生きと詠んだ短歌が多く、思わず笑顔になると言います。同時に、授業で学んだ広島や水俣、世界各地の戦争、身近な外国人、いじめをテーマに切実な思いも込めている、と▼〈水俣を地図で見つけて指をさすこの小ささに詰まった悲しみ〉神代くるみ(東京都・高2)、〈何気ない「ここで生まれてよかったね」それは言ってはいけない気がして〉服部愛美(茨城県・高3)、〈日本語を学ぶ教室ズザンナはゆっくり常識、常識と書く〉髙橋愛花(横浜市立大3年)▼若者たちは、つらい歴史に向き合い、その重さを受け止め、歌にすることで理解しようと試みます。また自分とは違う境遇の他者に寄り添い、抱える困難に思いをはせます▼ほほ笑ましいのは幼子の歌。愛情いっぱいに育っています。〈くちあけてからすのようにまつぼくにままがかわむくみかんがはいる〉河合良泰(石川県・幼稚園年長)、〈ハンバーグピーマンにんじんのこさないわたしもできるエスディジーズ〉脇玲依紗(静岡市・こども園年長)▼「これを機に短歌を続けてほしい」と古谷さん。「訴えたいこと、悲しくてつらいこと、自由に表現すれば、心が慰められ元気になる。短歌は生きるよすがになると思います」
2025年11月30日

