(写真)大浦湾に土砂を投入するダンプトラック(中央)=28日、沖縄県名護市辺野古(鈴木公子さん提供)
(写真)地盤改良船(赤白塗装の塔を複数有する船)が5隻ならぶ大浦湾=28日、沖縄県名護市辺野古
沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設で防衛省沖縄防衛局は28日午後、埋め立て区域北側の大浦湾で埋め立て土砂の投入を開始しました。大浦湾側で本格的な埋め立て作業が行われるのは初。大浦湾に広がる軟弱地盤の改良工事が半年近く中断するなど、新基地の完成はまったく見通せないにもかかわらず、新たな工事を強行しました。
埋め立てが始まったのは、陸地とN1、N2、N8の各護岸に囲まれた「埋立区域(3)―3」と呼ばれる区域(地図)と見られ、防衛局が地盤改良を余儀なくされている軟弱地盤が広がる区域とは別の場所です。
日米両政府は、11月20日付の日米合同委員会合意で、「埋立区域(3)―3」を含む水域での埋め立て実施を決めていました。
新基地建設でこれまでに投入された埋め立て土砂は計画総量の約2017万6000立方メートルの約16・4%(10月末時点)にすぎません。辺野古側はほぼ陸地化されましたが、大浦湾側は、埋め立てに必要な土量約1700万立方メートルのうち投入済みは約13万立方メートルと約0・8%(10月末)にとどまっています。軟弱地盤のない場所で埋め立て作業を始めても、軟弱地盤の改良ができなければ工事はいずれ頓挫します。
防衛局は今年1月29日、砂くいを打ち込んで地盤を固める「改良」工事を開始しましたが、6月10日以降、この作業を行う地盤改良船は6隻すべてが撤退。10月1日には1隻が大浦湾に戻るも数日で再撤退し、「気象・海象に係る情報などをふまえ安全確保のため、地盤改良船を退避させている」などとして地盤改良工事を半年近く中断していました。
地盤改良船は11月25日、3隻が大浦湾に戻り、28日時点で5隻の姿が大浦湾内で確認されましたが、28日は砂くい打設(打ち込むこと)を行っている様子は視認できませんでした。
地盤改良工事で打設される予定の砂くいなど約7万1000本のうち、地盤改良船が今月、戻るまでに打設完了したのは約2900本にすぎません。さらに、最深で海面下90メートルに達する軟弱地盤の改良は現在の技術では不可能です。政府の想定では新基地完成と普天間基地返還は最短で2036年ですが、完成の見通しはなく、普天間基地の危険性除去にはつながりません。
行動やめるわけにいかない
28日、土砂投入に対し海上で抗議行動を行った、「カヌーチーム辺野古ぶるー」のメンバー鈴木公子さんは、中断が続いた軟弱地盤改良工事は「頓挫していると思う」と話しましたが、米環境NGOに「ホープスポット(希望の海)」に認定された「いのちを育む生物多様性の(大浦湾の)海に土砂投入されるのはかなり胸が痛い」と語りました。
鈴木さんは、来年1月18日告示(25日投票)の同県名護市長選に向けて政府は、土砂投入を強行することで反対しても無理だと市民に思わせたいのではないかと指摘。それに対し新基地建設絶対反対の行動が重要であり、政府が、どんなに理不尽な力をふるおうと行動を「やめるわけにはいかない」と力を込めました。

