日本共産党

メニューとじる

すべての記事が読める

赤旗電子版購読お申し込み

2025年11月29日

主張

高齢者医療負担増
「応能負担」の名で不公平拡大

 70歳以上の医療費窓口負担3割の対象を広げる議論が厚労省の審議会で本格化しています。財務省の審議会では一律3割にする案が示されており、予算編成までに結論を出すとされます。自公政権が2028年度までに検討するとしていたのを、自維政権が前倒ししたものです。

 現在、69歳までは現役世代とされ3割負担です。70~74歳は2割、75歳以上は原則1割ですが、「現役並み所得」とされると3割です。狙われているのは、「年齢ではなく能力に応じた負担」の名目で、「現役並み」の所得基準を下げ、3割負担を拡大することです。

 現在、「現役並み」の基準はおおまかに言うと、単身で年収383万円以上です。

■現役世代の4倍

 財務省の資料によれば現行で、70歳以上の人の1人当たりの医療費自己負担額は年間7・1万~8・7万円で、50歳以下の人の2~3倍です。75歳以上の1人当たり医療費は現役世代の4・4倍です。

 誰でもいずれは年を取り病気がちになります。自己負担の割合を現役世代と同じにすれば、退職後に収入が減ったなかで医療費を賄うのは多くの国民にとって困難です。

 年収383万円というのは「現役並み」と言えるほど高くありません。しかも、厚労省の試算では、この間の賃金上昇を踏まえると「現役並み」の基準額は単身者で425万円(23年度)とすべきです。基準の引き上げこそ必要で、据え置き、いわんや引き下げなどあってはなりません。

 上野賢一郎厚労相も、高齢者は所得が低く医療費が高い傾向にあると認め、3割負担では「必要な受診が抑制されるおそれがある」と言わざるをえません。(11日の会見)

 高齢者が、必要な医療を、ほかの年代の人と平等に受けることを保障するのが社会保障の役割です。「原則3割などにすれば、不公平の是正どころか不公平が拡大する」(日本共産党の小池晃書記局長、20日の参院財政金融委員会)ことになります。

■危機をあおる自維

 自維政権は、医療費が膨らみ現役世代の保険料負担が増大する、制度が維持できなくなると危機感をあおり、医療費削減をすすめようとしています。しかし、高齢の親を支えている現役世代にとって、高齢者の負担増は自らの負担に直結します。わずかに保険料が減ったとしても現在と自分の将来の負担は増えます。

 国立社会保障人口問題研究所の社会保障費用統計によれば、日本の社会保障支出の対GDP(国内総生産)比は、日本より高齢化率が低いドイツ、フランス、スウェーデンより少なく、社会保障支出のうち政府拠出と保険料の事業主負担分が低いのが特徴です。

 日本の経済力からすれば社会保障は支えられます。国民の保険料を下げるには、国民負担を増やすのでなく、政府と事業主の拠出を増やすことです。その際、中小企業への国の支援が不可欠です。

 税の集め方と使い方を抜本的に改め、大企業・富裕層への優遇税制をただし、米国言いなりの大軍拡をやめて社会保障の財源を確保することこそ必要です。