2025年7月31日(木)
きょうの潮流
教えてくれた短歌がずっと心に残りました。〈死ぬる気で出征したる故郷に隠れ病む身となりて換へりぬ〉。若い頃、学友に連れられ参加した原水爆禁止の平和行進。そこで出会った被爆者が詠んだ歌です▼一期一会の貴重な出会いは、その後の人生を変えました。被爆者援護の托鉢(たくはつ)を長年実践。半生にわたって反核を訴え続け、原発阻止の先頭に。福井・小浜の明通寺住職、中嶌哲演(なかじま・てつえん)さんです▼原発銀座と呼ばれるほど集中する若狭の地。いずれの建設も反対運動がわき起こりましたが、すさまじい金力や権力、暴力によってごり押しされてきました。福島第1原発事故以降、住民の反対運動は広がり、関西電力・大飯原発の再稼働差し止め地裁判決も力に▼しかし、いままた関西電力は福井・美浜原発で新規の原発をつくるために動きだしました。原発回帰を鮮明にした政府の計画をよりどころに、将来にわたって原発に依存する愚行です▼これには中嶌さんも怒り心頭。老朽した原発を強行に動かし続けていることも、次世代型という原発の増設も、結局は延命路線にしがみついているだけで絶対に認められない。参院選では沈黙しながら、終わった後に表明するとは卑劣極まりないと▼きのう、カムチャツカ半島付近で起きた巨大地震の影響で日本各地に津波警報が出され、多くの人びとが避難しました。思い起こされた14年前の大震災と原発事故。その教訓を忘れたのか。中嶌さんの心からの叫びは、この国に原発が存在することを改めて。