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2025年7月27日(日)

きょうの潮流

 それは何のための碑なのか。長く隠されてきました。岐阜の山あいにある鎮守の森に建立された「乙女の碑」です▼その意味が明らかにされたのは7年前。「なかったことにはできない」と声をあげた女性たちの勇気と覚悟が伏せられてきた性暴力を刻み込みました。新たに建てられた碑文には、皆を守るために「性接待」を強制された史実が綴(つづ)られています▼太平洋戦争の末期、「満州」に渡った黒川開拓団は、敗戦とともに命の危険が迫る状況に。生き残るためソ連軍に助けを求めた団の幹部は、その見返りとして15人の女性を差し出しました▼身も心も深い傷を負った女性たちは、ふるさとに戻ってからも中傷や偏見にさらされました。封印されてきた負の記憶と事実。それが解き明かされていく過程と、被害女性の「その後」の姿を記録してきたドキュメンタリー映画「黒川の女たち」が公開中です▼国策によって移り住みながら、軍隊から置き去りにされ、国からも見捨てられた開拓団。その悲劇の中で起きた性暴力。監督の松原文枝さんは本紙日曜版に「満州事変を起こしたのは誰なのか。具体的に顔を見せることで、女性たちが何十年も苦しんだことの罪深さを知ってほしい」と語っています▼満蒙開拓団は、中国の人びとにとっては侵略者でした。戦後80年にふりかえる加害と被害の歴史。先の碑文には、被害にあった女性の詩が刻まれています。「次に生まれるその時は平和の国に産まれたい 愛を育て慈しみ花咲く青春綴りたい」


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