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2025年7月26日(土)

2025とくほう・特報

参政党街頭演説で聞いてみた

消費税廃止を願うが… 生活苦とメディア不信

 「日本人ファースト」を掲げ、排外主義をあおって伸長した参政党。支持した人は何を思い、何を願ったのか。街頭演説などで聞いた声から考えます。(特報チーム)


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(写真)街頭で参政党の排外主義に抗議する人たち=19日、東京都豊島区

 「消費税廃止、なんとしても実行していきたい! 自民党の政治、変えていきましょう」。東京選挙区から立候補し、無名の新人ながら2位で当選した参政党のさや候補。選挙最終盤の街頭演説で一番力を込めたのは「消費税廃止」でした。聴衆から拍手が湧き、一番盛り上がるのも「消費税廃止」の訴えです。

 東京都目黒区の私鉄駅前の街頭演説で熱烈に拍手していた60代の女性は、孫のため添加物のない食品の情報をネットで集めていたところ参政党のサイトに行き着いたと言います。いまの最大の関心は「消費税」。「参政党は消費税を廃止することで、世の中をよくする道を示している」と力説しました。

自民に嫌気

 「税金か社会保険料、とにかく何か下げてほしい!」。男性のタクシー運転手は、その思いで参政党に投票しました。「安倍(晋三元首相)さんが好きで自公体制が続けば良いと思っていた。でも物価高騰に自民党は何もしなかった。そのくせ裏金はもらっていて、嫌気がさした」

 投票日の出口調査(「朝日」21日付)によると物価対策で「消費税減税」を求めた人は71%。その人たちの比例代表の投票先で最も多かったのは参政党で、17%に上っていました。

 東京・中野駅前での日本共産党の吉良よし子候補の街頭演説。70代の女性がビラを受け取り、足を止めました。「参政党か共産党か迷っている。勢いのあるところに入れたい」。一番の願いは「消費税減税」でした。記者が、参政党の「消費税廃止」は赤字国債が財源でインフレが起きる危険があること、共産党は11兆円の大企業減税を是正した財源などで消費税を5%に引き下げると説明すると、共産党への支持を表明しました。

女性差別

 同党の神谷宗幣代表は公示日に「高齢の女性は、子どもは産めない」と発言、抗議行動が広がりました。女性支持者はどう受け止めたのか。50代の主婦はこう語りました。「私は大学を出て20代は体を壊すまで働き、子どもを産む時期を逃しました。死ぬほど働くのを当たり前にしていたのは自民党です。神谷さんは産みたい人が若くして産んで、そのあと働けるようにといっている」

 長時間過密労働のもとで働いた女性の苦悩が伝わってきました。しかし「国家にとって出産や子育ては、国の根幹となる営みの一つ」「『将来の夢はお母さん』という価値観を取り戻す」という同党は、戦前「産めよ増やせよ」を強いた、女性差別の国家主義です。

外国人差別

 「元は自民党支持」と語る人に各地で出会いました。秋葉原駅前で、演説を聴いていた男性(63)は、「自民党に入れてきたが、裏金問題があまりにひどいから、今回はやめようと思っている。自民党以外で入れるなら、参政党がまだまし」と言います。

 参政党は「日本人ファースト」を掲げ、「行き過ぎた外国人受け入れに反対」「望ましくない迷惑外国人などを排除」と主張しています。男性にどう思うか尋ねると、「外国人が増えて、(埼玉県)川口市などでいろんな問題が出てきている」と語りました。

 記者が「外国人の犯罪が増えているとか、外国人が生活保護で優遇されているなどは根拠がないとメディアも報じている」と指摘すると、男性は「メディアが誘導している気がする。参政党の発信と、どっちが本当か分からない」と。支持する人からは、「奨学金を外国人に優遇している」「選択的夫婦別姓にしたら戸籍が曖昧になり、外国人の土地取得が容易になる」などの発言が続々。事実に反すると指摘されていることも、かたくなに信じている様子がうかがえました。

SNSで右翼言説

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 選挙最終日の19日、東京・港区の芝公園に主催者発表で2万人が集まったという演説会。神谷代表は「20人当選させて、スパイ防止法を国会に提出させてください」と力説。歓声と拍手が湧き起こり、異様な雰囲気に包まれました。

 新型コロナウイルスワクチン接種に疑問を持ち「反ワクチン」を主張する人と交流して参政党に出会ったという70歳の女性は、同じ「反ワクチン」を信奉する女性(63)と参加していました。親族には共産党支持者もいると言います。思想信条の自由を侵害するスパイ防止法に違和感はないのでしょうか。女性らは「日本にはスパイがうろうろしている」「スパイ防止法がないのは日本だけ」と語りました。

 歴史修正主義も特徴です。「日本は侵略なんかしていない。東南アジアの人々の生活や気持ちにそって学校やインフラを整備しただけ。現地の人に感謝されていた」と50代の女性。また「闇の政府に支配されている」など、米国のトランプ大統領の支持者の間で広がった「ディープステート(闇の政府)」という言葉もあちこちで聞かれました。

 こうした言説は同党の動画サイトや関連するサイトなどで振りまかれています。選挙でSNSや動画サイトを投票の参考にした人は「ある程度」を合わせて46・9%(時事通信の出口調査)に上りました。そのうち23・9%が参政党に投票。群を抜いています。

 利用者が好みそうな情報が自動的に選ばれ、それ以外は届きにくくなる「フィルターバブル」のなかで同じような意見を持った人同士でつながり、批判的言説を目にすることができなくなっています。ある男性支持者は、「スマホに参政党への批判がまったく入ってこない。これでいいのかと思う」と語りました。

「差別許すな」立ち上がった人々

 排外主義を掲げる同党へ抗議に立ち上がる人の姿がありました。「わたしは差別に抗(あらが)う」と書かれたポスターを楽器ケースに貼り付け、手書きのプラスターを持って秋葉原駅前の街頭宣伝に立っていた東京大学3年の男性は、その理由をこう話しました。「排外主義は反科学、反知性主義で、学問にとっても良くない。デマで国民を誘導することが問題です。万が一、参政党が実権を握った時、『あのとき何もしなかった』では悲しすぎるから」

 池袋駅西口で手作りのプラカードを掲げていた女性(33)は静岡県から上京して5回目の抗議行動です。「外国人差別は少数者への差別になり、戦争への道になりかねません。やれるだけのことはやろうと思ってきました」。自民党の裏金スクープを知り電子版の「しんぶん赤旗」と日曜版を購読しています。「国民に知らせてくれた感謝の気持ちです」

 芝公園の最終演説には抗議の人たちも詰めかけていました。手作りのプラカードを掲げ最後尾にいた会社員の男性(28)は行動に参加するのは初めて。「仕事が終わって走ってきた」と言います。「対立と分断の社会を食い止めたい」。話すうち涙があふれました。

 親しい友人が参政党の言説に触れ、ヘイトメッセージをSNSに投稿するようになりました。「論理をつくして間違っていると説明しても納得してくれない。友だちとの間に分断を持ち込んだ参政党が許せない」。帰路、こんなメールをくれました。「抵抗も友情も手放さず頑張ります。期日前投票で吉良さんに入れました」

閉塞感打開する運動を

法政大名誉教授 五十嵐仁さん

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 参院選の結果は、自民党政治の終焉(しゅうえん)に向けた歩みの始まりといえます。衆院に続いて参院でも与党が過半数を割り、石破政権がいつ倒れても不思議ではない状況になりました。

 同時に、極右排外主義の参政党や与党補完勢力の国民民主党が伸長した背景には、生活苦や格差拡大を生み出した自民党政治に対する不平・不満、将来への不安や怒りなどがあり、それに対する異議申し立てでもあります。これは与党の地盤を崩す一方、危険な逆流への選択ともなりました。

 参政党は右派ポピュリズムの典型で、歴史に逆行する極右排外主義の主張をしています。極右的な考えを持つ自民党安倍派などを支えてきた岩盤保守層が、その本音を語る参政党に「いいことを言う」「スッキリした」となびき、自民党票が流出しました。

 事実に反するウソや偽り、デマでもネットやSNSで注目を集めれば広く流布される状況の下で、歴史修正主義をまき散らすのも問題ですが、それを簡単に信じて支持してしまう傾向は深刻です。自公政権が教科書検定などで教育内容に介入し、歴史修正主義を広めて本当の歴史を教えてこなかったことも、その背景にあると思います。

 極右排外主義が台頭する根源には、生活苦と政治への閉塞(へいそく)感があります。暮らし、医療・介護、農業の危機を打開し、米国言いなりの大軍拡に歯止めをかける展望を示す取り組みが大切です。同時に、デマにだまされず、まともな判断能力を持った有権者を育てる運動、日常的な情報戦も新たな課題になってきました。「しんぶん赤旗」の役割は大きいと思います。


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