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2025年7月26日(土)

主張

日米関税合意

「国益」に反する譲歩許されぬ

 「日米両国の国益に資する合意ができた」―トランプ米政権との関税交渉に当たった赤沢亮正経済再生相は合意後そう語り、石破茂首相も合意内容の発表会見(23日)で成果をアピールしました。しかし中身は、トランプ政権の身勝手な要求、脅しに日本が一方的に譲歩したものです。

 石破首相が会見で語らなかった日本の譲歩が米国側から明かされたことは重大です。武器輸入に関し石破首相は会見で何も言わず、赤沢担当相も「合意には防衛費に関する内容は含まれていない」と説明していました。農産物の関税は引き下げないとして「農業を犠牲にする内容は一切含まれていない」(石破首相)と強調していました。

■武器の輸入を拡大

 しかし米政府はその後、▽日本が米国製の防衛装備品(武器)を毎年数十億ドル追加購入▽ボーイング機100機を含む米国製民間航空機の購入▽トウモロコシ、大豆、肥料など80億ドル(約1兆1700億円)相当の米国産品を輸入―するなどで合意したと発表しました。米政府当局者の話として、米企業からの防衛装備品購入を年140億ドル(約2兆円)から170億ドル(2兆5千億円)に引き上げるとも報じられています。

 石破首相は日本の財政や農業に打撃を与える内容を発表せず国民をだました形です。赤沢担当相は、米政府が公表した合意概要を「(帰国途中の)機内で読んだ」と記者団に語っています。日米の合意文書もつくられておらず、両国政府の解釈がずれています。これではまともな合意、協定とは到底言えません。

 日本の産業や国民の暮らしにかかわる重大な内容です。日本政府の勝手な対米約束をそのまま認めることはできません。国会に詳細な合意内容を文書で示して徹底審議し、国民の利益に反する譲歩を許さない闘いが必要です。

■巨額な公的資金で

 合意では、対米投資を増やすため国の年間税収を超える5500億ドル(約81兆円)を支援するとします。政府系金融機関の国際協力銀行、日本貿易保険を通じて、米国に投資する日本企業に出資、融資などをします。政府系金融は国債と税金など公的資金で支えられています。利益は米国が取り、巨額のリスクは日本国民がかぶる恐れがあります。しかも米政府の公表文では支援対象に艦船の建造や関連施設の近代化など軍事支援まで含まれています。

 トランプ政権は国際ルールや日米貿易協定に反して自動車に25%の追加関税をかけ、その他の品目でも日本に25%を課すと脅してきました。15%に下げたと言いますが、理不尽な数字を突きつけられて結局、高関税をのまされ譲歩を強いられました。

 石破首相は米国の協定破棄を問わず、「撤回を求める」と言いながら実際は要求していません。こうした姿勢では今後も足元を見られ合意を破られるでしょう。現にベセント米財務長官は、日本の譲歩内容の実行状況を四半期ごとに検証し、それ次第で25%に戻すと発言しています。

 あまりに横暴な米国に毅然(きぜん)とものが言えない政治の転換が迫られています。


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